馬ん目抜き鳥(御井)

江戸ん者な生き馬ん眼ば抜くち言うが、こん筑後にゃ、そげなムゴかこつする者な一人でんおらんが、昔から高良山にゃ夜中に馬ば襲うち目ん玉ば抜き取る鳥りんおるち言われとる。ほんな名はシイちいうて、夜中になっと柿ば食う。そして厩ん馬ば見つくっと目ん玉ば食う。こりがあっち言う間んこつなけどげんも防ぎようんなかげな。そっで府中一帯ぢゃ厩ん側(ソバ)に柿ば植ゆるもんぢゃなかち言うて、ほんに柿の木ばきらうもんたい。そりばってんもう馬飼うとる者がおらんごつなったけ、そげん柿の木ばいやがるこつも無うなったたい。

高良山物語115


訳)

江戸の者は「生き馬の眼を抜く」というが、
この筑後には、そんなむごいことをする者は一人もいないけれど、昔から高良山には夜中に馬を襲って眼の玉を抜き取る鳥がいると言われている。

ほんとうの名前は「シイ」といって、夜中になると柿を食べる。そして厩の馬を見つけると眼の玉を食う。これがあっという間なものだから、どうにも防ぎようがないそうだ。
だから府中一帯では厩の側に柿を植えるものではないと言って、本当に柿の木を嫌った。

だけど、もう馬を飼う者がいなくなったので、柿の木をそんなに嫌がることもなくなったんだよ。

高良山茶屋「望郷亭」
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