肥後に通じとる高良山洞穴(御井高良山)

高良山から二十里ばっかり離れとる肥後の迫間川ん上、鳳来んそばの大岩下んに洞穴んあるが、あまり奥の狭もなって深かけ誰でんどこで終えとるか知らんぢゃった。
ある時白か鶏ば一羽追い込うで見たら、そりきり出て来んぢゃったけ、こん穴はどうなっとっぢゃい、やっぱ分からんばいち言う話しなった。

ところがそん鶏が高良山の洞穴から、ひょくっと出て来てコケコッコーち、いさぎゅう鳴いたもんぢゃけ、こりゃ肥後ん穴と高良山の穴は続いとるちわかったげな。
高良山の中腹に御天ち言うとこんあって、其処にまーだ誰でん入ったこつのなか洞穴んあるが、こりゃ座主が殺された時、その魂が掘って中にかくれたち言われとる。

篠原原稿


訳)

高良山から二十里ほど離れている肥後の迫間川の上、鳳来のそばの大石の下に洞穴があるけれども、あまりに奥が狭くなって深いものだから、誰もどこで終わっているかを知らなかった。
ある時、白い鶏を一羽を追い込んでみたら、それきり出てこなかったので、やはり、この穴はどうなっているのか分からないという話になっていた。
ところが、その鶏が、高良山の洞穴からひょこっと出て来て「コケコッコー」とたいそう鳴いたものだから、これは肥後の穴と高良山の穴が続いていると分かったそうだ。

高良山の中腹に御天というところがあって、そこにはまだ誰もが入ったことのない洞穴があるが、座主が殺された時、その魂が掘って中に隠れた洞穴だと言われている。

初手物語198

*)いさぎゅう:「たいそう」の意味 熊本県の方言らしい。

迫間川:熊本県八方ケ岳龍門ダム付近が水源→菊池川に合流→有明海へ注ぐ
鳳来川:大分県境あたりから竜門ダムへ流れ込む迫間川の源流の一つだったようだ
高良山から竜門ダムまで国道3号線で70km程(直線距離で40km程)

高良山茶屋「望郷亭」
kurumenmon.com